【梗概】北信濃から江戸に出稼ぎに来ていたお藤は、思いもせぬ恋愛沙汰に巻き込まれて、商家での下女奉公の口を失う。一方、時を同くして、江戸の若い娘の間で『見聞男女録』という公家物の御伽草子が流行り出す。だが、どうもその本には何か隠された秘密があるようで……
【登場人物】
藤…………………目の大きな器量持ちで、本が大好きな女の子。
池田重太郎………北町奉行所定町廻り同心。亡き父の蔵書が家の離れに残されている。
美代………………重太郎の妻。
深一郎……………重太郎と美代の一人息子。北町奉行所同心並。
次郎,卯助,長助…..重太郎の供回り。池田家に住み込みしている。
染七………………潜りの貸本屋。
嶋田屋當右衛門…京橋の古本屋の隠居。重太郎の亡き父と懇意にしていた。
吉井………………北町奉行所定町廻り同心。
【題の由来:万葉集巻第二・九六】
水薦刈る 信濃の真弓 わが引かば
貴人(うまひと)さびて 否といはむかも
(私が弓を引く心境で告白しても、貴方はお高くとまって「嫌だわ」とか言いそうだなぁ)
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